「友達って、何なんだろうって思います」
セッションの初め、彼女はぽつりとつぶやきました。
中学3年生のMさん。明るくしっかり者の印象を受けましたが、その言葉の裏には、誰にも見せない葛藤がありました。
今回は、人間関係に悩む中学生とのコーチングの実例をご紹介します。彼女の中にある「本当の声」に耳を傾ける時間は、やがて少しずつ、彼女の表情や行動を変えていきました。

人間関係って、めんどくさい——
Mさんはクラスでは目立つタイプではありませんが、いつも友達に囲まれている子でした。
一見うまくいっているように見えた彼女でしたが、コーチングで語られたのは、意外にもこんな本音でした。
「LINEもグループも正直めんどくさいです。
でも、無視されたり仲間外れにされたりしたくないから、合わせてます。」
「先生とか大人に“人間関係も勉強よ”って言われても、なんか納得できないんです。
じゃあ、なんで私はこんなに疲れてるんですか?」
無意識のうちに“周りに合わせる自分”を演じ続けてきたMさんは、
誰にも見せないところで、少しずつ心をすり減らしていました。
コーチングで交わされた、最初のやりとり
私:「Mさん、今日はどんなことを話したいですか?どうして話してみようと思ったんですか?」
Mさん:「…なんか、もう限界かもって思ったからです。」
Mさん:「この前、親にも“なんでそんなに不機嫌なの”って言われたけど、自分でも分からなくて…。
たぶん、“いろんなことで疲れてるんだろうな”って思ってます。」
そのあと、彼女はゆっくりと言葉を探しながら話し始めました。
・「グループの中で、気を使わないといけないこと」
・「言いたいことが言えないもどかしさ」
・「親や先生に理解されない孤独感」
話していくうちに、少しずつ彼女の口調はやわらぎ、
「私、実は…」という言葉が何度も出てくるようになりました。
「“いい子”を続けるの、もうしんどいです」
Mさんが何度も繰り返した言葉がありました。
「“いい子”をやってるの、そろそろしんどいです。」
彼女は周りから「しっかり者」「気がきく子」「優しい子」と見られていて、
だからこそ「そうでいなきゃいけない」というプレッシャーを感じていました。
だけど、心の中では——
・「本当は、もっと自由にしたい」
・「ムカつくときだってある」
・「でも、嫌われるのが怖い」
そんな葛藤を、ずっと抱えてきたのです。
コーチングが目指すのは「答え」じゃなく「気づき」
私は、コーチとして“解決策”を与えることはしません。
代わりに、「その子の内側にある気づき」に寄り添い、問いを投げかけていきます。
私:「Mさんは、“本当はこうしたい”って思うこと、ありますか?」
Mさん:「…あります。
たぶん、“無理して笑いたくない”っていうのが本音です。」
私:「その“無理して笑わない”って、どんなときにできそう?」
Mさん:「うーん…。たぶん、家とか、あとは…“何も期待されてない場所”?」
彼女は、その後も少しずつ、
「自分がどんなときに安心できるのか」
「どんな関係が心地いいと感じるのか」
について、言葉にしていきました。
「話してよかった」と言えた時間
初回のセッションの最後、Mさんはこんなふうに言ってくれました。
「今まで、ここまで自分の気持ちを話したことってなかったです。
“私、実はこう思ってたんだな”って初めて気づきました。話してよかったです。」
彼女の表情は、最初よりも少しやわらかくなっていました。
コーチングは、1回で魔法のように変わるものではありません。
でも、自分の中の「本当の気持ち」に気づくことで、少しずつ“自分を取り戻す”ことができるようになります。
自分の「感情」に気づくと、関係の見え方が変わっていく
2回目のセッションで、Mさんはこんな話をしてくれました。
「最近、友達と話すのがちょっとだけ楽になりました。
前は“こう返さなきゃ”って頭の中が忙しかったんですけど、
“今、私ちょっと疲れてるな”とか、“ムカついてるかも”って思えるようになって。」
“気づく”ということは、誰かに話す前に、まず“自分と会話する”ことでもあります。
Mさんは、自分の中にあった感情に少しずつ気づき始めていました。
「親に対しても、がまんしてました」
3回目以降、Mさんは家庭の話もするようになりました。
「実は…親にもあまり言えなかったことがあります。
勉強とか進路のことも“ちゃんとしなきゃ”って思ってて、
でも、本当はずっと疲れてて、
“今日も頑張ったね”って言ってほしかっただけなのかもって思いました。」
私:「Mさん、これまでずっと“がんばる自分”で生きてきたんですね。」
Mさん:「うん…。
“いい子でいる私”って、誰のためだったんだろうって考えました。
自分で選んでたつもりだったけど、ほんとはちがったのかも。」
彼女は、自分が“人間関係でがんばってきた理由”を少しずつ見つけていきました。
それは、友達との関係だけじゃなく、親や先生、家族との関係にもつながっていたのです。
少しずつ、自分を「信じてみよう」と思えた瞬間
コーチングの回数を重ねる中で、Mさんは変化していきました。
例えば、こんなことを話してくれました。
「最近、友達のLINEグループで“無理に返さない”ってことを決めたんです。
そしたら、“既読スルーしても大丈夫だよ”って言ってくれる子もいて。
勇気出してよかったなって思いました。」
「あと、“ムカついた”って親にちょっと言ってみたら、
“そうなんだね”って聞いてくれて、びっくりしました。
“わかってもらえた”って、こんなにうれしいんだって思いました。」
大きな行動じゃなくていい。
けれど、小さな“自己開示”や“感情表現”をひとつずつ実践することで、
Mさんの「自分との関係」「人との関係」が変わっていきました。
6ヶ月後、彼女が語った言葉
半年のコーチングを終える頃、Mさんはこう言ってくれました。
「前より、自分の気持ちが分かるようになったし、
“なんでこんなに疲れるんだろう”って悩まなくなりました。
無理してるときは無理してるって思えるし、
それをちょっと誰かに言える自分になれた気がします。」
「前は“人間関係=しんどい”って思ってたけど、
今は、“人とつながるのって悪くないかも”って、ちょっと思えるようになったんです。」
彼女の表情は、最初のセッションとは比べものにならないほど、やわらかく、自信に満ちていました。
子どもたちの心の中には、「ちゃんとした理由」がある
中学生は、「何を考えているのか分からない」と言われがちです。
でも、彼らが抱えている悩みや葛藤の奥には、
その子なりの「ちゃんとした理由」があります。
・誰かに認められたかった
・嫌われたくなかった
・がんばってるって思ってもらいたかった
ただ、それを言葉にする手段をまだ知らないだけ。
私たち大人が“聴く耳”を持ち、“問いかける姿勢”を忘れなければ、
子どもたちは少しずつ、自分の心の声を言葉にできるようになります。
小さな一歩が、「自分らしさ」への道しるべになる
Mさんのように、
「いい子」でいようとがんばる中学生はたくさんいます。
それは優しさでもあり、怖さの裏返しでもあります。
だからこそ、コーチングでは“心の奥の本音”を丁寧に聴いていきます。
多くの中学生は、自分の魅力や力に気づいていません。
でも、大人が少し立ち止まり、話を聴き、問いかけるだけで、
その子の中にある光が見えてくるのです。
私はこれからも、コーチングを通じて
「人間関係に悩む子どもたちが、“自分を生きる力”に目覚める」
そんな瞬間を、たくさん支えていきたいと思っています。
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・「もっと子どもと深く向き合いたい」
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